禁酒番屋

【禁酒番屋】
　とある藩で、お侍同士が酒の席で決闘騒ぎを起こす。
　これがもとで大事な家来二人が命を落としてしまった。
　これに怒ったのがお殿様。これ以降の飲酒を禁ずる！という
　命令が出てしまい、藩内には酒の持ち込みや持ち出しを監視する為の
　小さな番屋が作られ、誰とはなしに禁酒番屋と呼ばれるようになった。


　ある日のこと。大酒呑みの近藤様が酒屋に顔を出す。
　赤い顔してここを通ろうものなら捕らえられてしまうなあ、
　酒を呑んだら酔いが覚めるのを待って帰宅するのだという。
　そんなはなしをしながら、酒を升で二杯呑み干し、
　今晩の寝酒にしたいので夕刻までに小屋へ持ってこい、と頼む。

　が、番屋でもってバレてしまうのでムリだから・・・
　と言ってるそばから話しも聞かずに近藤様は帰ってしまった。

　酒屋は困ったあげく、奉公人の提案を採用し、
　はじめ「水カステラ」と偽り番屋を通ろうとしたが
　役人に見つかり酒は飲み干されてしまう。
　次に「油」だと偽り同様に番屋に行くが、これも酒だと見破られ
　これもまた飲み干されてしまった。

　どうにも悔しい酒屋。終いには、小便のご注文が、ということにして
　本当に小便を持っていく。タダで一升の酒を呑まれて黙っちゃいられねぇ！
　奉公人やら店中のものの小便を徳利に集めて、三度番屋へ。

　役人は先の二回の酒でもってベロンベロンに酔っ払っている。
　「手前、向日横丁の小便屋でございます。近藤様のお屋敷へ通ります。
　　なんでも、松の根元にかけるといいんだとかで小便のご注文を・・・」
　「たわけ！そんなわけあるか！役目の手前落ち度があってはならん！」
　と言葉を口にし、この小便徳利をひったくる。
　しめた！とばかりに喜んだ酒屋は
　「どうぞどうぞ、ごゆっくり」とニヤニヤ顔だ。

　「中を検めるでな、そこに控えておれ！」
　「水カステラと偽ったあとで油だと偽った。今度は小便だと・・・」

　ブツブツいいながらフタをあけ茶わんに注ぐ。
　「どうやら今度は燗をしてまいったらしい・・・」
　「燗をしすぎているようだ、泡立ってる・・・」
　「何だか今度は目にしみるなぁ・・・！」
　「役目の手前、落ち度があってはならん！控えておれ・・・」
　茶わんに口をつけたところで小便だと気づいた役人。

　「むむむ、この正直者めが～っ！」

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いっぺん生で聞きたかった噺です（*^m^*）
この登場人物はみんな悪いヒトなんだけども
そんなに憎むほどの悪人ではなくて
振る舞い、考えがやけに滑稽でおかしく楽しいので好きです。
しかも馬風師匠のだから迫力満点、雰囲気絶品！

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2008年7月19日　大銀座落語祭にて＠鈴々舎馬風

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