蒟蒻問答 [か]
【蒟蒻問答】
上州・安中で蒟蒻屋を営む世話好きの旦那に助けられ数日やっかいになる。
元気になったし、そろそろ働く気は・・・ということになるが、
江戸には帰れないし、まだダメだという。それならば、と
村の寺に住職が居ないのでそこの住職になれ、と勧められた。
住職に成りすましたのはいいが、弔いも無く
毎日酒を飲んで過ごしているのも退屈だった。ちょうどそこへ訪問者が現れた。
旅の僧で、問答を願いたいと言う。これに焦った男は、
何とか寺の住職は居ないと思わせ、この日は帰ってもらったが
住職が帰ってくるまで日参いたす。と言われたのでどうしようと焦りだす。
問答に負けたほうが唐傘一本で寺を追い出されると知って、
寺にある金目のものを売り払い金にかえ、従事している男の里にある寺へ
逃げようとしているところへ、蒟蒻屋の旦那がやってきた。
荷物を散らかしている様子を見てそのわけを聞いた旦那は、
自分が住職になってそいつを追い返してやるという案で
翌朝、住職を身なりをこしらえて修行僧がやってくるのを待った。
そしてやってきた修行僧。挨拶をしても口を利かない偽住職。
旦那が無言でいるのは「無言の行」であると思いこみ、
身振り手振りで色々と問いかけてきた。
胸
の前で小さな丸を作って旦那に突き出すと、相手を睨みつけながら
両手で大きな円を描いた。驚いた僧侶は旦那に頭を下げた後で、
両手を開いて見せると、旦那
は片手を開いてみせる。
またしても頭を下げ、恐々と指を三本立てて見せると、旦那は
「あっかんべー」の仕草をしてみせ、旅の僧は
これではかなわないと寺を
出て行こうとした。
あわてて逃げる修行僧に問答はどうだったかと尋ねると・・・
「御住職は無言の行の最中であると思われたので、
まずは胸の前で小さな輪を作り「御住職のお胸の内は?」と尋ねたところ、
両手で大きく円を描いて「大海の如し!」とおっしゃられました。
次に両手を開いて『十方世界』
は、と尋ねますと、
『五戒で保つ』と五本の指を立てて申されました。最後に『三尊の弥陀』は、
と尋ねますと「目の下にあり」と申されました。
愚僧の及ぶ所
のない、偉大な御住職であられます」
これに驚いた男。旦那のところへ行き、修行僧は逃げ帰ったと
告げると、旦那はなぜか怒り心頭の様子。
「あ
いつはただの貧乏修行僧だ!オレの顔をジーッと見て
蒟蒻屋の旦那だなーって気づきやがった。こんな小さい丸を描いて、
お前のとこの蒟蒻はこんなに小さいん
だろーって言うから、
両手で大きく円を描いてこれだけデカイと言ってやった。
そしたら十丁で幾らだと聞いてきやがったから、五百文だと言ってやると、
それは高い、三百文にまけろと言ってきた。
だから、あっかんべー!としてやった」
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上方落語相当:餅屋問答
餅屋問答の場合は、蒟蒻屋が餅屋になります。
その他、キャラクターの設定や動きなどは全く同じです。