SSブログ

たち切れ線香 [た]

【たち切れ線香】
 大店の若旦那が、花街の芸者・小糸に惚れこんでしまい
 お茶屋に通い詰めていた。金遣いが荒くなってきたことを
 懸念した親旦那が親戚連中を呼びどうしたものかと話し合う。

 これが気になっている若旦那は、座布団やお茶の世話を手伝っていた
 丁稚を呼び、大人たちが何を話しているか教えてもらう。
 大人達の口からは、若旦那にとってよくないことばかり。
 のら作業の果てに倒れるとか物貰いをさせようとか
 金を湯水のように使っていた若旦那はこれを丁稚から聞いて
 頭に血が上り、大人たちの話し合いの場へ乗り込んだ。 


 町の荒くれ者のように汚い口調、着物の裾を片方の手で持ち
 本人抜きで勝手な話し合いするな、と怒鳴る。
 物貰いだの野良作業をさせるだの勝手だ。
 それ以外ならどんなことでもする、と啖呵を切ったら、
 ならば、ということで蔵に入れられてしまう。

 「100日、蔵の中でお過ごしください。一歩たりとも外出はなりませぬ」

 蔵に入ってすぐ、小糸から手紙が届きはじめる。
 毎日毎日届く手紙の対応に、店の者を一人担当しないと
 店のほうが立ち行かない。そうこうしているうちに
 そうして100日が経過した。

 おとなしく心を入れ替えた若旦那が蔵から出た時、番頭が

 「(小指のコレから)手紙が毎日来てました、100日続いたなら
 わたしも考えましたが、80日目でプツリと途絶えまして・・・」
 と言いながら、最後に届いた手紙を若旦那に渡した。

 もう小糸のことは吹っ切れた、という若旦那は手紙を読んで番頭に言った。

 「蔵から出たらお礼参りに行きたいと思ってた。外出させて欲しい」

 風呂に入り着物を着替え賽銭を手にして外に出た。
 共の丁稚を撒いて小糸のいた置屋へ急いだが、
 そこに小糸の姿はなかった。
 
 おかみさんから小さな位牌を差し出され、察した若旦那。
 何故死んだのか、誰が殺したのかと興奮し詰め寄る。

 小糸は、若旦那に会いたいと思い恋焦がれやせ衰えていった。
 若旦那が誂えてくれた三味線を弾きたいと言い、
 支えられながら座り「シャン」と一度音を鳴らしたところで
 ・・・小糸はこの世の者ではなくなった。

 若旦那が仏壇に線香をあげた時、小糸の三味線が鳴り出した。
 地唄の「雪」だ。小糸が弾いてる、と泣きじゃくる朋輩たち。
 
 若旦那が、
 「一生、女房と名のつく女は作らない」ということを仏前で口にした瞬間、
 三味線がパタリと鳴り止んだ。

 「何故やめる、もっと弾いてくれ小糸!」
 という若旦那に、おかみさんがひと言。

 「若旦那、もう小糸は三味線を弾けません。
  ちょうどお仏壇の線香が、たち切れました」

-----*----------*-----
NHK連続テレビ小説「ちりとてちん」の中で、
母親・糸子と父親・正典の馴れ初めと仲直りの過程で
出てきたエピソードはこれに重ねられていました。

実際に聞く たち切れ線香 は涙なしでは聞けません(ノ_<。)
会場はシィ~ンとし、鼻をすする方もいたし、
ハンカチで目を押さえる方も多かったです。

-----*----------*----------*----------*-----
2008年4月18日 桂吉弥・柳家三三ふたり会にて@桂吉弥
2008年7月20日 大銀座落語祭にて@桂米左
2009年9月5日 桂よね吉独演会にて@よね吉


nice!(0)  トラックバック(2) 

nice! 0

トラックバック 2

瀧川鯉昇独演会桂よね吉独演会 ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。