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厩火事 [あ]

【厩火事】うまやかじ
 夫婦ケンカに疲れ果てたお崎が、仲人のところへ
 離縁するべきか、と相談にくる。

 ワケを聞くと、細かい不満が積もり積もっているらしいことがわかる。
 骨董に興味を持ち始め小遣いを渡せば全部骨董を買ってくるし
 帰りが遅くなるからご飯をよろしくね、と言って出てくれば
 帰りが遅いのは遊んでんだろーと怒鳴り散らす。
 もう疲れたんだよ、と泣き言を言うが、同様に仲人も
 亭主が昼間っから酒を呑みグウタラしている様に
 我慢ならないところだった、と言った。 けれど、別れちまえ、と言えば、
 でもアタシがいないとあの人生きていかれないだろう?
 と、亭主に情けをかけているお崎。

 そこで仲人の旦那は、ある話をお崎に聞かせる。
 唐土のお屋敷で厩が火事になった。馬が何頭もいたけれど
 戸が外れ逃げた馬もいるし焼け死んだ馬もいた。
 が、この家の主は馬のことなど口にも出さず、
 使用人たちにケガは無いか、とそればかり口にしていたという。
 このお屋敷では奉公人からの信頼も厚くなり円満に暮らしていた。

 もう一つ。さるお屋敷の亭主が骨董を集めるのが趣味だった。
 奉公人が掃除の際にお皿を割ってしまった時、
 奉公人の体は心配一つせず、皿は~皿は~と、皿ばかり口にしていて
 終には皆に見放されてしまった、という二つの話しをして、
 お崎にあることを持ちかける。

 人の了見を試すのは良くないが、亭主の大事にしている茶わんを
 おまえ台から落ちて割ってしまえ。
 割れた茶わんを気にするか、おまえの体を気にするか。
 おまえの体を気にするならまだ見込みはあるってもんだ。
 だが茶わんばかり心配するようじゃあ離縁したほうがいい。

 そういわれ、躊躇いながらも帰宅したお崎。
 亭主はご飯を作って待っていてくれたが、食事をする前にあたし、
 ひとつやることがあるんだ、と言って亭主の骨董が置いてある棚から
 茶わんを一つ手に取った。

 おまえ、割れたら大変だからソーっと置け、な。危ないから。

 と、茶わんが割れることを心配した亭主をよそに、
 お崎は台から落ちて腰を打ち予定通りに茶わんも割れた。

 亭主は一瞬、茶わんは!と言いかけたが、すぐにお崎の体を心配した。
 「おまえ、ケガは?大丈夫か?ケガないか?」
 「あたしを心配してくれたの?やっぱりおまえさんは唐土だった~」
 と泣いたところで、

 「あたりまえじゃないか。おまえが元気じゃなくちゃ、オレは遊んで酒が呑めねえ」
タグ:愛楽 市馬
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