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七度狐 [さ]

【七度狐】
 喜六と清八が稲荷のお参り帰り、小石を投げて遊んでいたところ
 その小石が草むらで寝ていたキツネの額にぶつかってしまう。
 出血もみられ、キツネはこれに怒り小石を投げた男二人を
 だまくらかしてやろうとたくらむ。

 二人の目の前に大きな川が現れる。以前着たときはこんなの無かったのに、
 と清八が悩むが、まあ石を投げてみたら「ガサガサー」と聞こえたので
 水の下は麦畑であろうと判断し着物を脱いで
 荷物と一緒に頭の上にまとめあげ、川を渡り始めた。

 深みにはまったら危ないので、深いぞ、と言ったら棒を引け、と喜六に教え
 清八が前になって進み始める。

 その様子を、隣の畑から見ていた農民二人。
 「あの二人の旅人、おめえの麦畑踏み荒らしてっぞ。しかも裸で!」

 どうやらキツネに騙されたんではないかと理解した二人は
 喜六と清八に声をかける。

 「キツネをいじめたか?」
 「いじめた覚えは無いなあ」

 農民によると、ここいらのキツネには
 「一度のイジメで七度にわたって恨みを晴らす根性の悪いキツネ」がいるという。
 もしかしたら何かの拍子でそいつに目を付けられてのことかもしれないから、
 田畑の広がる道路で無しに大通りに出れば大丈夫だから、と教えてもらったが、
 あたりは暗くなり始め道路は狭くなってきてしまった。

 目をこらすと前方に、ポーっと浮かび上がる明りがあった。
 尋ねるとそこは尼寺だった。尼寺なので男の人は困っていても泊められない、と
 一度は断られるが、本堂で通夜(※1)をしてくれたらイイですよ、とのことで
 二人は本堂に場所を移して荷を下ろす。

 空腹を覚えた頃、この庵主さまが雑炊を作って来てくれた。
 恐縮しながら食べはじめたが、この雑炊はジャリジャリしていた。
 ワラは入ってるしヤモリでダシを取ってあると聞いて食べる気が失せた二人は
 この後、庵主さまより留守番を頼まれた。下の村に用事があるので頼むと言われ
 まもなくして尼寺を出て行ってしまった。

 すると村の者が大勢尋ねてくる。庵主さまは留守であると説明をしたが
 彼等が言うには、金貸しのおばあさんが亡くなったが通夜の間中棺おけから出てきて
 金返せ~と騒いで怖いので今晩預かって欲しい。それじゃあ頼むよ、と
 強引に棺おけを置いて帰ってしまった。

 本堂の隅に置かれた棺おけから、言われた通り「金返せ~」と出てくきたおばあさん。
 お稲荷にお参りに来ただけで金は借りてません!と言うと、
 ならば歌を歌え!というので二人は渋々歌い始める。

 昼間、二人を麦畑の中で助けた農民が、
 お地蔵様の前で歌を歌ってる喜六と清八を見つける。

 「まぁだあいつらキツネに騙されてるんだな」
 「しょうがない根性悪いキツネだ!こらしめてやろう」
 二人の農民は、ふいに出てきたキツネを挟み撃ちにし
 エイッとキツネの尻尾をつかんだが、尻尾がスッポーンと抜けてしまった。

 「ひえぇーっ!!」

 驚いてよく見てみると、なんと畑の大根だった。

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2008年7月29日 桂吉弥発売記念サイン会付き落語会@内幸町ホール


※1 一晩中起きて、ご本堂に安置されているご遺体を見守っていてくれたなら、という意味。

タグ:吉の丞
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