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てれすこ [た]

【てれすこ】
 これまで見た事のない魚が網にかかった。
 村の物知りに聞いても、長老に聞いてもなんだかわからない。
 しょうがないので奉行所へ届け出た。


なんの魚なのか、漁師が見てわからないものが
奉行所でわかるはずも無く、懸賞金をつけて、
「魚の名前がわかるものには褒美をつかわす」という触れを町に出した。

少しして、ある男が奉行所へやってきた。魚の名前を知っている、というので
聞いてみると「てれすこ」という名前だとのこと。
でもお奉行様もこの魚の正体を知らないので、これがてれすこであるかどうかを
検証する手立ては無く・・・しょうがないので褒美はこの男の物になる。

お奉行様、この魚を干して、また魚の名前を知らぬかと触れをだした。
ところがまた同じ男がやってきて、今度は「すてれんきょう」だと言った。
これを聞いて怒ったお奉行様。
「同じ魚なのに違う名前を言いおって」と怒り、「言語道断!打ち首獄門の刑に処する!」

いよいよ刑が執行されようか、というとき。妻子に会いたいことを告げ、
奉行所に妻と幼子がやってきた。そして妻に言った。

「イカの干したものを決して『スルメ』と呼ばないように、
 子が大きくなったら教えてやって欲しい」

これを聞いたお奉行様。イカは干すとスルメになる。
では、てれすこを干すとすてれんきょうと呼ぶかもしれないと気づき、
妙に納得したのでその場で無罪放免になった。

さあこれを塀の隙間から覗いてた町人。
すぐさまこのお裁きが町内を駆け巡った。
あの男が何故無罪放免になったのか・・・ウワサ話しでもちきりとなる。

「最期に妻子に会いたいと願ったんだな。
 奉行所に来たおかみさんの顔色が悪い。何でだ~っと聞いてみれば、
 火を使う料理、火もの(干物)断ちをしていて、
 そば粉を水で溶いてそれを飲んでるっていうんだよ」

「ああ、だから手打ちにならなかったんだ」

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2008年8月26日 松丘亭寄席
タグ:鯉昇
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