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肝つぶし [か]

【肝つぶし】

 恩人の息子(友人)が病床に伏していると聞きかけつける。
 医者はなんと言っているのか尋ねれば、何の病かわからず、
 また先は短いという風なことを言われたとのこと。

 なんのことかわからない男は、この友人に詳細を聞き出す。
 寝込んだのは、恋煩いだと聞かされ、更にその相手というのが
 自分が見た夢の中の人物だというので驚いた。
 なら違う夢を見てそのお嬢さんを忘れな!と言うが
 なかなか違う夢が見られないんだと首を垂れる。

 ひとりだけ、この治療法を教えてくれたが、
 年月の揃った年頃の娘の生き胆を取り出し煎じて飲むのだというが
 年頃の娘を殺すわけにはいかない。
 というわけで治療法が無い。寿命を待つのみだと聞かされる。
 
 何か違う手立てがあるかもしれないから、と言い残して
 友の家を出た男は妹の待つ自宅へ帰っていった。

 帰る道すがら、かつて世話になった彼の父親を思い出す。
 なんとか彼の命を助けたい。妹と二人でに世話になった、なんてことを
 思い出しながらあるいていると、あることに気づく。

 妹が、その「年月揃った娘」だった。
 母親が亡くなる際、妹の生まれた年月のことは誰にも言うなといわれたことを。

 妹の命か友の命か迷いながら帰宅すると、
 酒の用意をしてくれていた。明日の朝早いから、と先に床に着いた妹に
 酒を呑んだ状態で出刃包丁を振りかざし・・・

 でも包丁は下ろせなかった。

 小さい頃から面倒見てきた妹を殺せない。と涙をこぼした兄貴。
 この涙が妹の頬に落ちたとき、これに気づいて目を覚ました。
 ビックリして「肝をつぶした~」と言うと、兄貴は笑顔で
 「肝がつぶれた?ならもう薬にはでけん」

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タグ:ざこば
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