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鮑のし [あ]

【鮑のし】
 友だちに、クジラが泳いでくるからと教えられ
 ひたすら海辺で来るのを待っていた甚兵衛さん。
 なかなかこないのでおなかをすかして帰宅するが、
 米も切れ、味噌も醤油も砂糖も切れ、いまや切れないのは包丁だけよ、
 なんてことをおかみさんから言われる。

 でも食べないワケにはいかないので、金貸しのきっつぁんに
 50銭のお金を借りておいで、といわれる。
 言われたとおりにお金を借りてくると、これでお米を買うのではなくて
 地主の倅が今夜祝言だからその祝いの魚を買って届けるんだと入れ知恵される。
 祝言だから、尾頭付きの魚を買って届ければ
 ご祝儀で1円がもらえる。1円のうち、きっつぁんに借りた50銭を返したら
 残りの50銭でお米を買って、お飯を食べるんだ。と教えられ、
 さっそく魚屋さんへ向かった。

 甚兵衛が魚屋に顔を出し、タイの尾頭付きをくれと言うと
 「50銭じゃ値が違いすぎる、それは勘弁しておくれ。
  祝いなら、鮑にしよう、カゴに入れて笹を敷いて・・・」

 鮑をキレイに飾り付けてもらって帰宅し、
 地主のところへ行くが、口上を教えてもらったが
 甚兵衛さんのことなのでうまい具合に言うことが出来ない。
 
 地主の旦那は甚兵衛さんのアホさを知っているから
 何を言っているのか察しをつけてくれたが、
 祝いの魚(鮑)を渡したところ、激怒してしまう。

 「持ってきたのは鮑だね?魚屋さんからもって来たなら腹も立たない。
 だが、おみっつぁん承知の上ならば受け取るわけにはいかない。
 『磯の鮑の片思い』という言葉があるんだ。
 婚礼の祝いに縁起が悪い、持って帰ってくれ!」

 甚兵衛がひとりで魚屋に行きそこから地主の家へ来たなら
 持ってきたのが鮑でも許せたが、
 一般常識を持っているおみっつぁんが見たのに鮑なんて!というのだ。
 魚屋に戻り、怒られてしまったよというと、
 今度は魚屋が激怒してしまった。

 「よおし、こっちだって黙って引っ込んでらんねぇ!
 もいっぺんいけ!鮑は尼が採って、一晩蒸してからむしろの上へ敷いて、
 その上に布団を敷いたら仲の良い夫婦が一晩寝るから『のし鮑』になるんだ。
 その鮑が縁起が悪いってぇ話あるか!」

 その他にも魚屋にウンチクを教えられ、再び地主の家へ。
 地主の旦那から色々突っ込まれるが、魚屋から教えてもらった
 ウンチクを披露し、地主を唸らせることが出来た。
 
 最後に、旦那からひとつ。これは分かるまい、ということで投げかけられたのは・・・

 「普通の『の』ではなく、杖を突いたような形の『杖付き『乃し』があるが、あれは何だ!」

 「ああ、あれね。あれは・・・あれは鮑のおじいさんです」

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「磯の鮑の片思い」は、鮑は貝の片面にだけ付いているので
それを「片思い」にひっかけたシャレです。

この、『杖付き乃し』のくだりは古いサゲなんだそうです。
地主の前で「ケツをまくって言いやがれ」と魚屋に言われ
「今日はフンドシしてねぇからケツはまくれねぇ」で終わる方もあるし
この杖付き乃しで終わる方もあるようです。


タグ:小遊三
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