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化け物つかい [は]

【化け物つかい】
 今日、宿替えしてきたばかりの夫婦。亭主のほうは、人使いが荒い。
 「おまえは足軽、オレが軍師。役割っちゅうもんがあんねや!
 この家はワシが探してきた。一軒やで庭がある家探してきて、
 前の長屋よりも家賃が安い。こういう探しができるのはワシだ」

 引越しの片づけで汗をかいたのと、夕飯の支度が済んでいるから
 ちょっとお湯屋へ行きたいとカミさんが言ったので、
 ワシは軍師や、と酔いしれながらお湯屋へ行くことをすすめ、
 カミさんは出て行った。が、すぐに走って帰ってきた。
 聞くと、背中を洗っていたら湯船の中の奥さん方の話が聞こえてきた。
 化物屋敷に引っ越してきた人がいるらしい、という内容に
 振り向いて話をしている奥さんを見たら、
 さっき自分が挨拶した奥さんだった。

 もしかしてここは本当に化け物屋敷なのか?と亭主に詰め寄ったが
 亭主はそれをあっさり認めた。
 化け物屋敷だから安く借りられたんだ、ありがたいと思え、と。

 けれど怖がってしまったカミさんはどうしようもなく、
 荷物をまとめて実家に帰ってしまう。
 化け物なんか怖くない、と言い張る亭主は家に残り、
 数日たって無事だったら迎えに行くからと約束をして別れた。

 夕飯を食べ酒を呑み、居間で転寝をしてしまった亭主は
 寺の鐘の音で夜中に目を覚ました。

 すると目の前に小僧が座っていた。寺の修行を抜け出してきた小僧だな、と
 思ったので、寺へ連れて帰ろうとしたら、小僧には目がひとつしかなかった。
 けれど亭主は驚かない。一つ目小僧だろうが関係なかった。
 初対面の人に対する態度ではないことにイラつきながら
 家の用事を言いつけ小言を始めたとたん、消えてしまった。
 近頃の子どもはなっとらんな!とぶつくさ言いながら、二日目の夜を迎えた。

 昨晩の一つ目小僧がなかなか出てこないので「早く出て来い!」と呼ぶと
 家全体が揺れ始めた。戸を開けて外をみると三つ目の大入道が立っていた。
 そんなに大きくては家の用事が出来ないから、屋根の草むしりをし、
 ウラの壊れてる塀を直しとけ、と言いつけるが、大入道はすぐに消えてしまう。

 近頃の子どもはほんっとになっとらん!とイラつきながら、
 三日目の夜を迎える。今晩はどんなのが出てくるかなーと楽しみにしていると
 この夜はのっぺらぼうの女が出てきた。
 顔が無いので会話がしづらいからと隅で表情を書こうとするが嫌がられる。
 仕方がないので茶わんを洗うように指示をし、繕い物を頼む。
 この仕事っぷりにほれた亭主は、毎晩アンタが出てきてくれ。と頼み、
 一つ目小僧は三日にいっぺんでいいや。てなことを勝手にしゃべっていると
 のっぺらぼうも消えてしまった。

 四日目。カミさんの実家へ行きこの三日にあったことを話すと
 カミさんはますます怖がり帰りたがらない。
 仕方がないので一人で帰ってきた亭主は
 この夜も誰が出てくるか楽しみにしていたが、出てきたのは、狸だった。

 「狸、おまえの仕業だったんか?このドアホ!
 狸のまま出てきたらアカンがな!化けて出てこんかーい!」
 「親方、もう勘弁してください!もうクタクタなんです、親元に帰してください」
 「ワシのこと、人使いが荒い、そう思ってんねやな?」
 「いいえ、親方は化物つかいが荒い・・・」
タグ:南光
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