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しじみ売り [さ]

【しじみ売り】
 小僧が、雪の振る中しじみを売って歩いている。
 とある家のお勝手口からしじみはいらないか、と声をかけると
 留守番役の男から「草履盗人だな?!」とあらぬ言いがかりを付けられる。
 今日は町のお祭で酒を呑む。すると明日は二日酔いになるから
 そしたらしじみ汁を飲めばよく効くから、だから買ってくださいと言っても
 盗人だ、と男が怒鳴り散らし小僧と言い合ってるところへ
 その家の主・親方がやってくる。

 見れば年端も行かぬ小さな子どもが、手足を真っ赤にし
 雪の中震えてしじみを売っている。この姿に盗人ではないと信じてくれ
 遠くから自分でしじみを掘って売り歩いているがちっとも売れないんだ、と
 小僧から聞いた親方は全てのしじみを買う、と申し出る。

 家にあげ、火鉢に当たらせてやって寿司や卵焼き、白飯、お新香を
 食べなさいと差し出したところ、竹の皮もください、と小僧が言ったので
 親方はその理由を聞いた。

 おとっつぁんは三年前に病死、その時の看病疲れがたたって
 おっかさんは寝たきりになり今では目もよく見えない。
 しばらく卵焼きだの白飯だのは食べてないから
 おっかさんに食べさせてやりたい・・・

 小僧の話を聞いて、おっかさんの分は別に包んでやるから
 気にせず目の前のものを食べなさいとすすめると
 笑顔になって平らげてしまった。ほっぺたも赤くなり
 これぞ子どもの顔だ、と喜んだ親方。

 先ほどのしじみの代金を渡した後で、金貨二枚を
 おっかさんの見舞いだと言って小僧に差し出した。
 すると小僧が言った。

 「こんな大金もらえません。大金をもらったから
  しじみ売りをしなくちゃなんなくなったんだから・・・」

 わけがわからない親方は小僧の更なる話を聞いた。

 姉さんがいて、人気の芸者としてあがっていたが、
 とある大店の若旦那と思い合う仲となったところで
 若旦那が勘当されてしまった。行き場のない若旦那は
 この姉さんが家に引取り小さな商売を始めたがうまくゆかない。
 終いには借金取りが来るようになり、困った二人は身投げをしようと
 橋の上にきたところで見知らぬ男二人にそれを止められた。
 ワケを話したら金包みをドサッと放り投げて名乗りもせず去っていった。
 その金は天からの授かり物だと思った二人はそれで借金返済をし
 正月の準備をこしらえたところに、
 町内で正月草々盗人に入られたというウワサがあがり、
 あの家は羽振りが妙にイイからあいつらじゃないか、ってんで
 姉さん夫婦は後ろ手に縄を括られ、牢屋入りしてしまった。
 あの時もらった金なんだと白状すればいいのにと言ったが、
 それを言ったらあの方達に申し訳ない。
 拾った金ということにしたが聞き入れてもらえなかった。
 姉さんが捕まり、家にはアタイとおっかさんの二人だけ・・・
 だから、いまこの金をちょうだいしたら、アタイも後ろ手に括られ、
 家にはおっかさんひとりになっちゃうから、だからこの金はもらえません。

 親方、その時の男は自分なんだと気づき、
 悪いことばかりは続かないからと話をした後で、
 姉さんと若旦那はきっとおまえのもとへ戻してやるから、
 だから今はこの金を持っておっかさんのところへ帰れ。と言い、
 おっかさんへの土産の折りを持たせて小僧を帰した。

 小僧を見送る親方と男。
 空になった桶を担いでもなお、蜆売りの声をあげる小僧を見ながら
 良かれと思ってしたことが裏目に出たことを知って、
 「肝に響いたよ」とひと言言うと、子分の男が続けて、

 「しじみがよう効く」

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これは上方の話です。江戸の話は若干違っていて、
親方はねずみ小僧という設定です。

小僧がしじみを売りに行った先は宿屋の勝手口。
そこで断られていたところ、かつてのねずみ小僧と子分が通りかかる。
ワケをきいてその宿屋の一室に上がりこみ
小僧に温かい食べものを与えながら話を聞く。
すると姉ちゃんは芸者で、好き合った若旦那と駆け落ちをした際に
悪党に騙され金を失った。そこで助けてくれた方があって
悪党から金を取り戻してくれ、更に足りないだろうからと
いくらか足して姉ちゃん達に手渡した。
翌朝、宿賃を払うとき、この金に、盗みに入られた家の刻印があるのを
見つけた宿の主人により番屋に通報され、若旦那は盗人の容疑で牢屋行き。
姉ちゃんは牢屋内で体調を崩したため自宅で見張りつきで病床に伏せている。
だからアタイがこうして働かないと食べていかれないんです。

これを聞いたねずみ小僧は、その男が自分だったと悟る。
イイことをしたと思ったのにその後で
そんなことになっているとは・・・と衝撃を受けながら、
小僧の売っていた全てのしじみを買い、
更に姉ちゃんにそのうちいいことも起きるから、と伝え
土産の折りを持たせて小僧を帰らせる。

後日、ねずみ小僧の子分が出頭し若旦那は釈放される。
姉ちゃんと夫婦となり、小僧とおっかさんを引取って幸せに暮らした。


という内容ですが、このサゲがイマイチ好きになれない立川志の輔さんは
出頭するのはかつてのねずみ小僧です。
子分に罪を着せるんではなくて、自分で罪を償うサゲとしていて
志の輔さんのしじみ売りは「新版しじみ売り」。
わたしは志の輔さんのサゲが一番好きだなぁ・・・。

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2008年7月20日 大銀座落語祭ほろりの会にて@桂まん我
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