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首屋 [か]

【首屋】
 仕事も金もなくなってしまった男が、何も無いなら首でもしまおうと考え
 首に風呂敷を巻きつけて街中を闊歩し始める。

 「くびぃーやーくびやっ」

 首なんか街中で売ろうったって売れやしないと
 歩く場所を変えてみたところ、ある旗本のお屋敷から声がかかる。
 首を売っている、と話すと買ってやるから来い、とのこと。

 勝手口から庭に通されると、真新しい刀を携えた侍が居た。
 買ったばかりの刀の切れ具合を確かめたいのだそうで、
 そこで首屋を呼んだ。

 首代を尋ねると、「間男代の七両二分で」と言う。
 「お武家様方なら密通があった場合なんかは刀でもってケリをつけるけど
  あっしら町人はそうじゃねえんでさ。間男代っていって、七両二分を
  支払ってそれで終わりにするんでさ。だからそれと同じくらいでいいかと・・・」

 そう聞いた侍。早速金は家族に送り届ける、というと、
 未練の女もいない、妻子もいないので、自分の懐に入れておきたいと言う。
 金を受け取り懐へしまいこむとなにやらゴソゴソとしている。

 襟足の髪の毛を自分の手で上にかき上げ、刀を振り下ろした瞬間、
 男はサッと刀を避け、張子の首をゴロゴロと投げ出した。

 「これは張り子ではないか!なぜ避ける!」

 「これは看板です」


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2008年7月19日 大銀座落語祭にて@川柳川柳

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