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王子の狐 [あ]

【王子の狐】

 ある男が、王子のお稲荷様にお参りした帰り、
 キツネがキレイな女性に化ける瞬間を見た。
 化かされるアホなやつの顔をみてやろうとあたりを見回すと自分しかいない。
 
 「ははぁん、俺を騙す気なんだな」と考えた男は、
 騙されたフリをして騙してやろうと企み、適当な名前でキツネを呼んでみる。

 するとキツネも乗ってきて、近くの料理屋「扇屋」に入り
 あぶらあげではなくて天ぷらを注文する。酒も注文し、酒は呑んだことがない
 というキツネに酒をすすめると、お猪口二杯呑んだだけで酔っ払い
 眠くなってしまった、と言ってその場に横になり寝てしまう。

 男は出された料理を平らげ、
 更にお土産の卵焼きももらって料理屋を後にする。
 時間を見計らって起こして欲しいと頼まれていた女中が
 キツネを起こしに行き、勘定を払うよう催促した。

 お連れの方は先に帰ってしまい、紙入やなんかは
 あなた様に渡してあるからと言われたことを告げると
 それに驚いて神通力が切れ尻尾や耳を出してしまった。
 女中は驚き狂ったように階下に下りこの事を責任者に告げると
 だんな様の留守中になんてこった!と、店の者総出で
 このキツネをこらしめてやることになった。
 定規やらホウキやらを手にキツネを追い詰めると、
 「キツネの最後っ屁」を発射して、逃げてしまった。

 出したところに料理屋の主人が帰ってきた。
 ワケを話すと主人は「お稲荷様のお陰でこうして店をやっていられる、
 狐さまがつがいで来たならおもてなしをすべきなのに!」と怒り、
 お詫びのお参りに行くことになった。

 その頃、元凶の男はというと・・・
 土産の卵焼きを友だちのところへ持って行く。
 卵焼きを手に入れたいきさつを話すと、
 「キツネは執念深い。四代まで、という。そんなもの貰えない」と
 受け取ってくれない。
 
 翌日、キツネとであった場所に手土産を持ってキツネの姿を探すと、
 子狐が遊んでいたので声をかけて事情を説明した。
 そして、侘びだと言って手土産を母狐に渡すよう託ける。
 子狐がそれを持ち帰ると母狐は昨日のことで体中が痛み苦しんでいる。
 そして、人間が来て騙して悪かったってこれを置いていったと話す。
 手土産を開けてみると美味しそうなぼた餅だった。
 子狐はさかんに食べたいと騒ぐが、母狐は

 「いけないよ。馬の糞かもしれない」。


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2008年7月19日 大銀座落語祭にて@柳家小袁治
タグ:小袁治 金馬
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