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胴斬り [た]

【胴切り】

 新しい刀を手に入れ、試し切りをしたくなった侍。
 大根や人参などでは生ぬるいので、夜道、マヌケなヤツがいたら
 そいつで試し斬りさせてらもおうと待っていると
 ほろ酔いの与太郎がやってくる。
 
 足音を立てないようにそーっと後ろから近づいて
 ズバーっと刀を動かすと胴体がポーンと火消し用の水が貯めてある
 木樽のフタにポンと乗った。

 斬られた当人は何がおきたか分からず、
 なんでここにいるんだ?と不思議がるが次第に酔いが覚めてきて
 胴体と足が別々になっていることに驚く。
 足に、こっちに来いと呼びかけ近くに立たせるが
 うまく動けないのでこれでは家に帰れないと考え
 誰かが通るまで待つことにした。

 しばらくして友達が通りかかった。友だちも酔っ払っていて
 おーいと声をかけて近寄ってもらった。
 辻斬りにあったことを話し今の状況を理解してもらって
 家までとりあえず送ってもらうことにした。

 胴と足が別々になった亭主を見て特に驚きもしない奥方は
 「この人五体満足でも食いかねてるのに、これからどうしたらいいのか」と心配する。
 翌朝、友だちが心配してやってきた。医者につれてった方がいいんじゃないか
 と気にかけるが、たいそう元気な様子なんだという。
 これから先のことを心配する友達は仕事を斡旋してやり、
 上はお湯屋番台に、足は麩屋の麩踏みの職人として奉公することになった。。

 日にちが経って胴体の居るお湯屋に様子を見に行くと
 たいそう居心地が良くて待遇もよくしてもらっている、と喜ばれる。
 
 「近ごろ目がかすむので、足に灸を据えてもらうよう弟に伝えて」と頼まれる。
 (麩踏みとなった足のほうは「弟」なんだと言い張る)
 これを受けて麩踏み職人となった足に会いに行くが、
 こちらもたいそう重宝されているらしい。
 無駄口も休憩も無く一日中踏み続けている、と。

 案内された、弟のいる桶には風呂敷がかけられていた。
 村のものが見物に来てしょうがないので隠しているんだという。
 風呂敷を持ち上げて声をかけると、なんと「足」から返事があった。
 何でも数日前から声を出すことが出来るようになったとか・・・。
 しゃべりながらプーっとオナラも出てしまうのだけど。
 驚きながら、胴体からの(兄貴)言伝を伝えると、

 弟からも言伝があるという。。
 「茶だの酒だのあまり飲まないように!小便が近くてしょうがない!」


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2008年8月15日 王子納涼落語会@王子小劇場

タグ:まん我
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