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三年目 [さ]

【三年目】


病床に伏せてしまった女房・お花にはもう手の施しようが無いので
最期に言いたいことがあれば聞こうと亭主がお花に話しかける。

お花は、心残りは無いが、あるとすればおまえさまだ、と言う。
私が死んだ後は新しい女房をもらうでしょう。するとその方を可愛がることになる。
そうなると悔しいからそれが心残り・・・

お花の気持ちを感じた亭主は、ある提案をする。
「女房はもたない。もたないつもりではいるが、親戚連中がやってきて
 後添いを勧められるかもしれない。断り続けるのもできないから
 そうなったら女房をもらうかもしんねぇ。
 もらった場合は、婚礼の晩、枕元におまえ出て来い」

これを聞いたお花、安心してなのか、まもなくして亡くなった。

女房に先立たれた亭主は独身を通そうとするが
親戚連中がやはり放ってはおかなかった。

ついに断りきれずに後添えをもらうことになった亭主は
婚礼の晩、お花が出てくるとソワソワして待つが・・・
なかなか出てこない。そして夜が明けてしまった。

そうしてお花が出てこないまま三年の月日が経った。

後妻との間には男の子がひとりいて、
お花の三回忌なのでみんなで墓参りに行って欲しいと頼み
女房子どもをつれて墓場へやってくる。

なんで出てこないだ、と恨み節を言って帰宅した夜、
ようやくお花の亡霊が出てきた。
子どもも生まれた今になって出てきて、遅いじゃないか、と問い詰めると

 「納棺の際に剃髪されたが、その姿でオマエさまの
 前に出てくるのは恥ずかしかったから
 髪が伸びるまで待ってたんだよ・・・」


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獅子十六の会@浜離宮 桂都んぽ
タグ:都んぼ
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