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辰巳の辻占 [た]

【辰巳の辻占】=辻占茶屋

 ひょんなことから大金を手にした男は一人の頼れるご隠居にこの金を預ける。
 ほれ抜いている芸者にこのことを話すと
 「盗られちゃうといけないから、あたしが預かっててあげる。
 ご隠居のところから持っておいで」
 と言われたので、この事をご隠居に話すと、どうも怪しいと言い金を渡してくれない。

 どーしても好きだ、末は夫婦になんていう約束も交わしているから
 あの娘は大丈夫だから、と男が言っても、玄人はそういうことを良く言う。
 おまえのようなやつが騙されやすいんだとさとし、
 芸者の気持ちを試すことを勧めてきた。

 友だちと酒の席でケンカをしてしまったから死ぬよりほかは無い。
 一緒に死んでくれ、とその芸者に言ってご覧。
 嫌だ、とか何のかんのと理由を付けてきたら怪しい。
 すんなりイイワヨ、というならこの俺が二人をくっつけてやろう。

 男はイソイソと女のいるお茶屋へ出向く。
 まだ片付けていない部屋でも構わない、と言って
 女が来るのを待っていると前の客が飲み食いをしたまま散らかっていた。
 そこに辻占があった。ひとつ試しに開けてみると悪い辻占ばかり。

 悪い辻占にクサクサしながら待っていると梅乃がやってきた。
 しばらく顔を見なかったねと言った後で、例の金持ってきたか、と聞いてくる。
 源やんは梅乃の話をさえぎり、コレコレこういうわけで
 身投げをしようと思うので一緒に来てくれと頼むが、
 梅乃はさりげなく嫌がる。

 「今夜?これから?ちょっと都合が悪い・・・」
 
 嫌がる梅乃を連れ出す源やん。梅乃は観念して、
 かんざしや羽織りを部屋へ置いて、すぐに戻るからと告げて店を出た。

 しばらく歩いて橋の上に来た二人。「南無阿弥陀仏!一の二の三!」
 この声で共にはまろうと言い合うがなかなか飛び込めない。
 梅乃にはその気がないので、離れた場所で同時に身投げをしようと提案をし
 勝手に対岸にうつってしまった。
 そして近くにあった大きな石を互いの掛け声でドボーン!と川に投げる。
 
 この音を聞いた源やん、本当に死ぬバカあるかいな!
 ワシは死ぬ気なんか無いのに、と視線を落とすとこちらにも
 大きな石があったのでそれを投げ入れた。ドッボーン!

 梅乃はこの音を聞いて、さっさとお茶屋へ戻る。
 どういうわけか途中二人は全く会いもせず、
 お茶屋の前に来たところでちょうどバッタリ行き会った。

 「梅乃!」
 「あーら源やん、久しぶり」
 「久しぶりやあるかい!さっきまで一緒やったやないか!」
 「シャバで会うたきりやがな」


タグ:染丸 蝠丸
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