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手水回し [た]

【手水回し】

 田舎の宿に大阪から来た旅の人から
 「手水をまわしておくれ」と頼まれた仲居は
 「宿の主に聞いて参ります」と言い下がっていった。
 主にこの事を尋ねると、厨房へ行け、と言われるが
 料理長も「手水」のことが何だかわからない。
 

 物知りの寺の和尚さんに尋ねて来いやということで
 行ってみると「長い頭を回すことだ」と教えられる。
 その足で、紹介された隣村に住む頭の長い男をつれてきた。

 この男、客の部屋に入ると
 「手水回させていただきます!」と言い
 この長い頭を回し始めた。驚いた客は怒って帰ってしまった。

 これがショックで、宿の主は番頭さんを連れて
 大阪に本物の手水回しを見るために出てきた。

 一晩がたち、さっそく手水をまわしておくれ、と頼んだところ
 少しして部屋に届けられたのが、桶にいっぱいのお湯と
 塩、歯ブラシになる棒だった。

 塩をお湯に溶かして飲むんじゃないですかね、という番頭の言葉を信じて
 そのようにして飲み始めるがなかなか飲めない。
 番頭に残りを飲んでもらったところで、
 もひとつ手水、置いておきます、と同じものがもう一組運ばれてきた。

 大阪の人はこんなの毎朝飲んでるんかいな、と言いながら
 どうにももう飲めないので

 「残りはお昼にいただきます」


タグ:雀々 佐ん吉
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