SSブログ

岸柳島 [か]

【岸柳島】
 渡し舟が出ようかというとき、侍が待て~と言いながら
 舟に飛び乗ってきた。

 座る場所も無いのに、町人はどけ、と威張り散らし始める。
 そして煙草を吸い、煙草ぼんを舟のフチでカチン、としたとき、
 雁首が水中にぶくぶく~と落ちてしまった。

 雁首を拾うから舟を止めろ、と威張りだすが
 一緒に乗っていたクズ屋から雁首の取れた残りを売ってくれと言われ
 怒り始め、クズ屋を手打ちにするとまで言い出した。


 これを聞いてたご隠居。
 どうかこの場はおさめ、クズ屋を切っても
 あなた様の徳にはならないからと説得をしてくれたが
 ならば打ち合いの決闘をしようと言い出す侍。

 困り果てたご隠居は船頭に頼んでもとの岸に舟を寄せてもらい
 血気盛んな若い侍は岸に着くのが待てずに船から飛び降り、
 さあ来い!とやる気マンマンだった。

 後にご隠居が続くかな~と思ったら長い槍を付き人から受取り
 岸に槍をついて舟をぐいーっと岸から離してしまった。
 侍はうるさいからこのまま対岸に行きましょう、とご隠居。
 船頭が舟をこぎ始めたところ、他の乗客は侍に向かって
 やいのやいのと文句を言い始めた。

 これが聞こえてたわからないが、侍、急に着物を脱いで
 桟橋をトトトっと駆け水中にもぐってしまった。
 そしてしばらく上がって来なかった。
 侍は何をする気なんだろうとご隠居に聞くと、
 水中からこの舟の底をグリグリと指して穴をあける気じゃあるまいか。
 という答え。

 文句を言っていた町人は、もしかしたら舟に上がってくるかもしれない、
 泳いで来るのかもしれないと恐れる。
 すると舟から少し離れたところでぶくぶく~っと泡があがり
 顔を出した侍にご隠居が舟の底に穴を空ける気かと問うと、

 「さっき落とした雁首を拾うのだ」

-----*----------*-----
2008年9月28日 池袋演芸場睦会
タグ:扇遊
トラックバック(0) 

トラックバック 0

日和違い千両みかん ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。