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千両みかん [さ]

【千両みかん】
 近ごろ、若旦那の元気が無く伏せがちなのを気にして医者に見せたところ
 何か気に病んでいる様子、このまま元気にならなければ数日で・・・という診断を受けた。

 この家の番頭が若旦那に何か心配事があるなら・・・と聞き出してみたところ、
 瑞々しいあのみかんが食べたいと焦がれていたのだ。



 若旦那がみかんに焦がれていることを知った番頭は
 「なぁんだ、みかんくらい」と、きっと持ってくると約束してしまった。

 が、季節は真夏である。みかんなど売ってるわけもなく
 親旦那にどうするんだ、と責められてしまった。
 みかんが無いと倅は数日の命・・・・もしそうなったら、
 番頭は殺人の罪で市中引き回しの上逆さ貼り付けだ、と脅され、
 汗だくになって町中のお店に聞き歩いていたところ
 少し離れた町にみかん問屋があるからと教えられる。

 ヨロヨロになりながらたどり着いたみかん問屋。
 ここで探してもらったところ、カビたり傷んだりした中で
 たったひとつだけ無事なみかんが見つかった。

 はじめ問屋の旦那はタダであげると言ってくれたのだけど
 番頭さんがうちも大店なので、と言ったところ
 それならばということで足元をみられ、千両で、ということを言われる。

 真夏のこんな時期にみかんを食べたがる人があるかもしれない。
 そう思って毎年、腐るのを覚悟で大金をはたいてこうしてみかんを大量に仕入れ
 冬になるまで置いてある。もしどなたかがたったひとつでも
 そのみかんが欲しいと言ってくださったときには、
 これまでの投資を全てそのみかんにかけようと思っていたといわれ、
 番頭さんは納得する。そして金額は旦那様と相談するといい、
 決して売らないように念を押していったん帰宅をする。

 このことを帰って親旦さんに告げると、倅の命は千両では買えないから
 そのみかんをぜひに、と言うことでたった一つのみかんが千両になった。

 持ち帰った千両のみかんを若旦那にわたし、
 皮をむきひと房、ふた房と口に入れていく間に、
 番頭は(全部で十房あるから)一口百両・・・ああ二百両!
 とお金のことが頭から離れない。

 すると、残り三房となったところで若旦那が言った。
 これをおとっつぁんとおっかさん、それからおまえさんで食べて欲しい、と。
 番頭はこれを預かり、親旦さんのところへ届けるはずが・・・
 近いうちにのれんわけされると思うが、その時は百両ももらえないだろう。
 この手の中に三百両ある・・・

 すると番頭さん、この三房のみかんを持ってそのままドロン~・・・。

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2008年9月28日 池袋演芸場睦会
タグ:喜多八
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